新体操部から棒高跳に

今野選手が棒高跳を始めたきっかけは。

中学生までは器械体操部で活動していたので、高校でも体操を続けたいと思っていたんです。でも、入学した高校には器械体操部が無くて、その代わりというか、新体操部があったので、似たようなものだろうと思って入部しました。そうしたら、まったく違うスポーツで（笑）。なんか違うな？ っと思いつつ活動を続けていた時に、部員が少なくて入部希望者を探していた陸上部の顧問の先生が、新体操部の活動を見に来た時に勧誘されたのがきっかけです。

でも、陸上部といっても、様々な種目がある中で、なぜ棒高跳という種目を選んだのですか。

その誘ってくれた先生の専門が棒高跳だったんです。なので、先生の専門がちがう種目だったら、私も棒高跳ではなかったと思います。

ところで棒高跳のどんなところが好きですか。

初心者で始めて、当然最初はまったく跳べない状態からスタートしたので、練習をすればするほど記録が伸びていくところが楽しくて続けていました。それに球技のような対戦型の競技と違って、自分との戦いというか、記録との勝負なので、記録が伸びて自信につながる事でどんどん楽しくなりました！ そして棒高跳は陸上の他の競技と比べても技術面の部分が大きいので、練習した分だけ伸びるところも楽しいですね。

始めたばかりの頃の記録はどの位だったのですか。

２m位でした。最初はポール（棒）のしなりを活かして逆さになって跳ぶようなカッコイイ跳躍ではなくて、ただただバーをまたいで座りに行くような感じで（笑）。

２mから始まった記録は、高校時代最終的にはどの位の記録が出るようになったのですか。

高校３年生の冬頃には、３m8０cmになっていました。

棒高跳ならではの、ポールのしなりを活かして、初めて逆さになって跳べた時って感動するのですか。

急に逆さで跳べるようになるのではなくて、テクニックの練習などをして序々に跳べるようになっていくので、気がついたら逆さで跳んでいたというような感じです。

楽しかった思い出というと何かありますか。

正直なところ、部活で楽しかった思い出はないですね。どちらかというとキツい事ばかりで。特に棒高跳は、技術練習が多くて練習時間が長くなるので、遊ぶ時間が無くてイヤでした。でも大会で好成績を出すと、クラスメイトから「ガンバってね！」って、応援してもらえるのが何よりも嬉しかったです。

ちなみに遊ぶ時間があったとしたら、どんな遊びをしたかったのですか（笑）。

遊びたいというよりは、当初は、少しだけ部活をやって、普通の女子高生らしい高校生活を送る予定だったんです（笑）。

逆に、ツラかった思い出はありますか。

高校時代はフィジカルよりもテクニックの練習が多かったので、練習がきつかったという思い出はないです。でもある日、疲れがたまっていたのか、まったく力が入らない事があって、でも適当に練習をこなす性格では無かったので、最後まで練習をやりきってから自宅に帰り体温を計ってみたら39℃の熱があった事がありました。その時はつらかったですね（笑）。

部活ばかりの高校生活とのお話でしたが、部活動以外ではどんな女子高生でしたか。

陸上は体重も管理しなくてはならないスポーツだと思うのですが、マイペースの性格なのと、食べることが大好きなので、チョコレートとかアイスクリームをよく食べていました。

高校時代の夢と言えば、なんでしたか。

高校を卒業してからも棒高跳を続けようという気持ちはなくて、当時の夢は、保育士になることだったんです。でも、高３の時に、試合でも結果が出ていたので、大学でも続けたほうが良いのではないかと言われて、それならばということで、保育士の資格も取れて陸上が続けられる大学を選びました。

日本人女子歴代7位、４m15cmを記録

今野選手が大学卒業後も、競技を続けていこうと決めた理由、また、きっかけは何ですか。

大学に入学してから、棒高跳への意識がどんどん高くなって、大学２年生の時には、卒業後も競技を続けて行きたいと思うようになったんです。そんな時に、現在所属させていただいている、トーエルが、陸上部を立ち上げるという事をうかがって、卒業後お世話になっています。

競技を続けていくと、たくさんの壁にぶつかると思いますが。

大学4年までは順調に記録が伸びていたのですが、トーエルに入社し、よし、がんばろう！ と思っていた矢先にケガをし、１年目、２年目と結果を出すことができなくて、その時はかなり悩みました。でも、まずはケガを治そう！ と思って前向きに。

競技を続けていく上で、オンオフの切り替えも大切だと思うのですが、オフに最適な気分転換はありますか。

やっぱり食べることですね（笑）！ 練習後、がんばったご褒美に、大好きなものを食べに行ったり。でも試合直前は控えるようにして、試合後にたくさん食べています！

食べることが大好きとの事ですが、競技力アップのために、栄養のバランスを考えた食事方法を取り入れたりしていますか。

そこまでストイックに栄養バランスを考えているわけではありませんが、なるべくバランス良く食べるようにはしています。特に試合前に体重が少し増えている時は、甘いものは控えるようにしています。

今年の5月5日に、日本人女子歴代7位の記録となる、4m15cmの自己ベストを出しましたが、練習方法やトレーニングなどで、何か工夫があったのでしょうか。

昨年は、300m走と150m走を、レストを短くして走り込みを増やし、フィジカルを強化しました。それにより助走が良くなったので、今年からは、試合と同じ距離の助走で跳ぶ練習方法を切り替えて、助走を短くして跳ぶ姿勢の練習を多く取り入れるようにしました。それにより、以前よりも跳躍時のフォームに安定感が増してきた事が記録につながってきています。

ちなみに、ポール（棒）はどの位の重さなのですか。

ポール自体は３kgなので、垂直に持っている時は、それほど重さを感じないのですが、倒していく時は10倍くらいの重さになると言われていて、かなり重いです。

今野美穂選手から中高生へアドバイス

ここからは中高生へのアドバイスを頂きたいのですが、部活や棒高跳を辞めたいと思ったことはありますか。

何度もあります（笑）。練習がキツかったから辞めたいということは無かったのですが、高校時代、記録も順調に伸びていたので、先生も熱心に見て下さって、でも私を中心に熱心に指導して下さることで、他の部員に申し訳ない気持ちがいっぱいで、友達に相談したことがありました。でもその友達が、私には棒高跳しか取り柄が無いから続けたほうがイイよ！ って言ってくれて、キツいコメントですけど、その通りだなって（笑）。

上手になる為には、厳しい練習がつきものですが、厳しい練習と上手につきあうコツはありますか。

高校時代は、オフの時も棒高跳の事を考えて、勝手に追い込まれていた事もあったのですが、最近はオンとオフの切り替えが上手にできるようになりました。そうする事で、キツい練習にも集中できて、オフは切り替えてとバランスが取れるようになると思います。

今野選手は試合前の緊張とかは、どう対策していますか。

私は試合であまり緊張する方ではないのですが、緊張を感じる時は、自分の出番まで、歩くようにしています。止まっていると、考えなくてもいいことを考えてしまうと思うので。
それと、大好きなチョコレートを持っていきます！

今野選手の今後の目標、夢を教えてください。

近い目標としては、来年の日本選手権で優勝する事です。そして２年後のリオデジャネイロオリンピックに出場する事が目標です。

最後に部活に励む中高生にメッセージをお願いいたします。

私は棒高跳を通して、がんばったら、がんばった分だけ、結果がともなうという事を実感してきたので、みなさんも、精一杯がんばって下さい！！

ありがとうございました。