スノーボードクロスにかけるアツイ気持ち
小学4年生の時、家族とスキーに出かけた時にたまたま目にしたことがきっかけでスノーボードを始めたそうですが。
はい。最初は趣味として楽しんでいただけなのですが、ターンが苦手で、泣きながらもくやしい気持ちと負けず嫌いの気持ちで滑っていました。
スノーボードというと、おしゃれなイメージがあるのですが。
毎週末、家族と一緒に、なかなか上手にならないスノーボードをやっていたので、おしゃれだなーとか、そんな気持ちになったことは一度もなかったです。でも、周りには上手な人たちがたくさんいたので、スノーボードってカッコイイ! と思っていました。
13歳の時、ハーフパイプで全日本ユース部門を優勝されていますが、現在、スノーボードクロスで活動されているのはなぜですか。
スノーボードを始めて2年目に出場したハーフパイプのユース大会で優勝したんです。自分のイメージよりも早く優勝できたので、それじゃ今度は一般の大会に出場してみよう! という事になり挑戦してみると、同い年の中学生が自分とは圧倒的なレベルの差で優勝していて、ハーフパイプで競うのは無理かもと思い、一気に自信を失ってしまったんです。そんな時に15才以上から出場できるスノーボードクロスに出場してみると、いきなり優勝してしまい、私これかも! と思ったんです(笑)。
スノーボードと言うと、スラロームを代表とするアルペンや、ハーフパイプなどのフリースタイル、そして現在、岩垂選手が活躍されているスノーボードクロスと、様々な種目がありますが、それぞれの種目の魅力というと。
ハーフパイプはフィギュアスケートのような感じで、スタートしてからゴールまでのパフォーマンスの総合点を競う種目なので、それぞれの選手が自分の魅力をどれだけ出せるかを競います。アルペンやクロスはタイムを競い、とくにクロスはヨーロッパで今一番観客が盛り上る種目です。選手同士が競い合う迫力のあるレース形式になっていることが魅力だと思います。
中学生、高校生の頃というと多感な時期ですが、スノーボード以外にもスポーツをやっていましたか。
小学生の時は陸上と水泳をやっていたのですが、なかなか続かなくて、でもスノーボードと出会ってからはスノーボードひと筋でした。私の場合、他の人とは違った事をやっているというところも魅力だったと思います。あっ、でも中1の時に1年間だけバレーボール部で活動していました。部員がぴったりの6人しかいなくて、すごく忙しかった記憶があります。
ちなみに、その他はまっていたことはありますか。
高校2年生の夏にゴルフにはまっていました。でもスノーボードの練習もしっかりやらないといけないので、今は夏場のゴルフを封印しています。
ところで、スノーボードのどんなところが好きで続けられていますか。
昨年から世界大会にも出場するようになり、それにともない練習もさらにハードになって何度も辞めたいと思うこともあるのですが、私からスノーボードを取ったら、それに代わって胸を張れるものが無いなと思い続けています。それに練習は厳しくても、一緒に乗り越えられる大好きな仲間がたくさんいるので、私の居場所はここだとも思っています。
好きという気持ち以上に練習が厳しいのですね。
はい。スノーボードは大好きですが、ツライ事7割、楽しい事3割です。よく周りからは、「海外遠征に行けて楽しそう!」って言われるんですけど、海外といってもいつも同じ場所で練習をしているだけなので、そこまで楽しくないんですよ(笑)。食事も3食パンだし、遠征先は田舎すぎて何も無かったり…。でもツライ事が多い分、普通の事が必要以上に幸せを感じられるんです。一週間ぶりのオフとか、日本に帰ってきたときに食べるご飯とか、ああ生きていて良かった!! って。
中高生時代に一番嬉しかったり印象に残っている思い出というと、やはりは15才で初参戦しいきなり優勝を果たした全日本クロスでしょうか。
はい。私はまったく覚えていないのですが、その時の写真を見ると、ゴールをした瞬間にすごく泣いていて、後にも先にも人生で唯一の嬉し泣きをしていました。
岩垂かれん選手が高校生の時、スノーボード以外ではどんな女の子でしたか。
スノーボードは冬がメインなので、夏場は何もやらなければオフになるんです。だからその時にフィジカルトレーニングをする事がとても大切なんですが、当時はあまり何もやらず、ただの普通の女子高生でした。放課後に友だちと一緒に渋谷で遊んだりしていましたね。振り返ると、高校3年間にもっとがんばっていれば良かったなって思います。
夢は語るのではなくかなえるもの
岩垂かれん選手は現在大学生ですが、中学3年生でプロ資格を取ってから、現在もワールドカップなどの大会で世界を転戦していますが、どのような気持ちで学校と両立しながらもプロアスリートとして活動されているのですか。
スノーボードをもっと多くメディアに取り上げていただき、スノーボードの魅力を広めていきたいという気持ちで活動しています。その為にも、まず自分が世界のトップレベルで活躍できるよう今は覚悟を決めて取り組んでいます。
上手になるために、どのような気持ちでキツイ練習を乗り越えていますか。
練習前は、オフまでの日数を数えたり、今日一日がんばろう! という気持ちで乗り越えているのですが、いざ練習が始まってしまうと練習がキツイとかは考えないです。それよりも世界で活躍するトップレベルの選手たちと一緒に練習をしているので、その選手と自分のどこが違うのだろうとかばかりを考えています。そして絶対に負けたくない! って気持ちが強くなるので、勝てる方法だけをずっと考えながら練習をしています。
大好きなスノーボードにかける覚悟ですね。
続けられない人の多くは、その日の練習のことだけしか考えていない気がします。でもそのキツイ練習の先にある目標がしっかりあれば、おのずと覚悟は決まると思います。だから私の周りにいる人たちはみんな勝ちたいという強い気持ちと覚悟を持って活動していますし、私もフィジカルトレーニングをしている時、なんでこんなに重いウエイトを上げているんだろうとか思うのですが、試合のシーンをイメージすると、絶対に負けたくないと思ってがんばれるんです。
試合で勝つ為に取り組んでいることはありますか。
フィジカルトレーニングを週6日行い2年前から体重を8キロ増やしました。世界のトップレベルの選手の多くが、身長180cm、体重70kgなので、それに比べるとまだまだ体は小さいですが、世界で通用するようなフィジカルにレベルアップできるよう取り組んでいます。
岩垂選手は世界中様々なスキー場に行かれていると思いますが、どこのスキー場が一番好きですか。
カナダのウィスラーです。ウィスラーは世界のリゾートと言われている場所で、一週間滞在しても滑りきれないくらい広大な大自然のスキー場で、町の中からゴンドラやリフトが出ていて最長20キロのコースがあり、雪質も良くコース外滑走も自己責任でOKなので自分たちでコースを決めて練習をしています。そして、太陽が空気中のダイヤモンドダストに反射して柱状に輝いて見える“サンピラー”という幻想的な自然現象も時々見られるので、雪山のスポーツをやっていて良かったと心から思える場所です。
あと、国内では断然、苗場スキー場ですね!
ちなみに、こんな男子カッコイイなー! と思う理想のタイプはありますか?
短髪黒髪って爽やかで印象が良いですよね。内面的な事を言うと、“夢男子(ゆめだんし)”はイヤですね。夢ばかりを語って努力しない男子っているじゃないですか。そうではなくて、夢に向かって努力をしている男子を見るとオーラがあるしカッコイイなって思います。
最近はまっているオフの気分転換方法はありますか。
朝ヨガにはまっています。朝にヨガを行う事で一日の生活リズムや呼吸が整うので、一日中精神的・肉体的にリラックスできるようになりました。
今後の目標をお願いいたします。
まずは3年後、2018年のオリンピックでのメダル獲得です。
最後に、部活に励む中高生へメッセージをお願いします。
大学4年生になった今、自分の過去を振り返ると、中学生の頃は勉強やスポーツも含めて色々な事にチャレンジして可能性を広げると良いと思います。そして高校生になった時にある程度目標や夢を一つに絞って、毎日積重ねて取り組むと良いと思います。夢があるなら一日もムダにしないで過ごしほしいです。
ありがとうございました。