YELL 部活応援プロジェクト [エール]

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2007年5月~2018年3月、日本を代表するトップアスリートのインタビューはこちら!

山口 絵理子

柔道 : 株式会社マザーハウス 代表取締役

今回の「いつも心に“部活道” ~先輩からのメッセージ~」は、株式会社マザーハウス 代表取締役・山口絵理子さんです。自分の心の声に、とても正直に向き合っている彼女の生き方を知れば知るほど、自分も、もっともっと自分に正直に生きていかなければいけないと気持ちに渇が入る。
人生は一度きりだし、どのように生きるかも自分次第だ。もちろん、どのような生き方をしようとも人それぞれ自由だし、自分がそれで良しと思える生き方が出来ればそれでいい。
自身の生き方を通じて、色々な人にメッセージと元気を送っている山口絵理子さん。見た目と中身を比べたとき、別人なのではないか? と疑ってしまいたくなるような26才の彼女のお話をどうぞ!

1.山口絵理子さんの”部活道”

山口さんが柔道部員だった頃のお話と、柔道をはじめるきっかけを聞かせて下さい。

小1の時にイジメにあっていて、秋学期から数年間学校に行く事が出来なくなってしまいました。そしてその反動で自分がもっと強くなりたいと思って、中1の時にちょっと非行にはしりました。(笑) まぁ、非行と言っても軽いものですけど・・・(笑)

山口絵理子

東京育ちの私にとって、埼玉の不良って、怖いイメージがありますけど・・・(笑)

そうですね。(笑) 色々な人にご迷惑をかけました。でも、もっともっとケンカが強くなりたいと思って、中2の時に柔道部をちらっと覗いたんです。その時練習を見ていて、なんで「投げられないのかな?」とか「簡単そうだな」とかって思ったんですよ。それで、ちょっとやってみようと入部しました。

山口絵理子

高校からではなくて、中学から柔道部だったんですね。

そうですよ。髪も染めていたし、タバコも吸っていたしと色々あったんですが、柔道の試合に出るために交わした監督との約束があったんです。 「タバコは吸わない」「お酒は飲まない」「茶髪にしない」「バイクに乗らない」「公共物を壊さない」「パチンコ屋に行かない」など30個以上の約束がありました。そういう作業を通じて更生して、中3の時に県で1番になったんです。でも全国ではベスト16だったので、悔しいな…と思って高校でも柔道を続けようと思ったんです。

山口絵理子

でも工業高校って男子校みたいですよね。もっと他に道はあったような気がするのですが。

埼玉で女子柔道が一番強い学校は埼玉栄高校で、全階級(7階級)制覇を何年もしていて、監督さんにも気に入ってもらっていたんですけど、英才教育を受けて強くなって勝ったとしても嬉しくないな…って思ったんです。
やっぱり自分の力で勝ちたいって思って、どうしたらいいかって考えたときに、男子と練習しよう!!! って思ったんです。で、男子はどこが強いかっていったら、大宮工業高校だったんです。
でも女子柔道部が無かったんで、中3の時に監督に女子柔道部を作りたいと交渉しに行ったんです。で、何度か交渉して、結果を出すんだったらと許可をもらったんです。(笑)

山口絵理子

女子柔道部を作ったんですか…

はい。一人でしたけど。(笑)

山口絵理子

そのバイタリティーやエネルギーはいつ頃から、自分にはあるなって感じましたか?

不良やっている時はあるなって思っていましたけど、でもエネルギーは多いなって思ってはいなかったです。ただ、「悔しいな!」とか「嬉しいな!」とか、感情の起伏は激しいですね。

山口絵理子

高3で柔道を引退して大学受験まで間もなかったと思うのですが…

まず大学受験ってなんだかわからなかったんです。工業高校だったので、社会とか理科とか主要五科目が授業では無いんです。製図を書いていたりとか溶接したりとかしてたんです。(笑) だから競争できないと思っていたので、2科目とか1科目で受験できる大学を選ぼうと思ったら、慶応大学が英語で受験できたので、それを目指してたんです。でもその前に推薦入試で合格したんです。

山口絵理子

でもなんで、慶応大学・総合政策学部に入ろうと思ったんですか? やりたい事がその学部にあったんですか?

いいえ、まったくありません。名前も響きもいいなって、感覚です! (笑) 中学でも高校でも24時間柔道一筋で学問はやってこなかったので、ただ勉強したいという一心です。

山口絵理子

2.国体2連覇!?

部活をやることは中高生にとって大事ですか?

私は部活で人間形成をしたので大事だと思っています。特に高校の時に3年間やってきて、1年目、2年目に全く勝てなくて、県の地区予選も2回戦負けを2年間繰り返していて、出れば出るほど中学の時に勝てた相手に負けちゃうんです。しかも男子の100キロと毎日練習をしていたので、怪我が絶えなくて、今でも靭帯が何本か切れちゃったままなんです。

山口絵理子

手術とかしなかったんですか…

手術もしてなくって、何度も何度も骨折もしたし、そんな中で自分の選択肢は間違ってたのかなって思う時期が2年間位あって、周りの人達からは「そんな練習方法で勝てるわけないわよ」って陰口をたたかれ、1位だった男子柔道部も2位になってしまって、それは私のせいだって言われたりと色々あったんですが、それでも自分を信じて3年生まで続けられて、最後、全日本の舞台で戦えて、その経験があるからこそ、今ビジネスをやっていて、色々な困難にあっても「もう一本やってみよう」という気持ちにつながっているんだと思うんですよね。

山口絵理子

あきらめないって気持ち、自分に負けないっていう強い気持ちを学んだんですね。

はい。 お客さんで中学生や高校生が「本読みました!!」って来てくれて、でもなんとなく自分自身に挑戦する姿勢が感じられなくて、世の中の全てを知ってしまって悲観しているような感じでしゃべるんですよね。「がんばってもしょうがないわよ」って大人びた感じで言うんですよ。
だけど私は「部活動」とか「スポーツ」って人間性を作る上で本当に大事だと思っていて、今でもバングラデシュで柔道をやっているんですけど…(笑)

山口絵理子

ああ! それでバングラデシュでメダルを持っている写真だったんですね!! 先日、奥村さん(マザーハウスの社員)に、「山口さんの中高生の頃の柔道をやっている写真を下さい」ってお願いしたら、バングラデシュ国体で柔道着を着て、メダルと賞状をもってニッコリ笑っている山口さんの写真が送られてきたんです。 つかぬ事をお伺いしますが、山口さんはバングラデシュ人なんですか?

日本人ですよ。(笑)

山口絵理子

国体に外人が出れるんですか?

はい。(笑) 交渉して絶対に出させてくださいってお願いして、練習に練習を重ねて金メダルを取ったんです。去年も一昨年も金メダルを取ったんで。

山口絵理子

2連覇しているんですか?

2連覇しました。(笑)

山口絵理子

部活動を経験したことにより、こういう事が役に立ったという事は何かありますか?

続けることが出来るようになりましたね。「継続」ってビジネスにおいても大事で、私の場合は、対バングラデシュなので、バングラデシュの人達をいかに忍耐しながら育てていくかって、いつもいつも「継続」なんです。一つの事を言い続けるとかやり続けるとかって、部活を経験する前は「飽きっぽかった」んですが、部活を経験したことにより、「粘り強さ」っていうのを教えてもらったし、「努力する意味」も教わりました。

山口絵理子

僕なんかすぐにつらい事から逃げ出してしまうんですが、一流のアスリートを見ていると、つらい事から逃げ出さずに黙々とやってるじゃないですか。それを間近で見ていると、最初から意識のレベルが違うんだなって格の違い感じるんです。僕はトレーニングとか部活とかは「修行」だと思わないとやれないです。だから山口さんを見ていると、部活で教わったというより初めから備わっていたように感じるんですが。

いやいや、そんな事はありませんよ。(笑)

山口絵理子

3.自分というテーマ

国際機関で働こうと思ったきっかけはなんだったんですか?

大学に入学してみると、周りはみな優秀な人達ばかりでカルチャーショックを受けました。バス乗り場とかで同い年くらいの子たちが普通に英語で会話をしていたり、ソフトを開発しているという子たちが話をしていたり。私は柔道一筋だったので、なんて世界は広いんだろうと痛感しました。
そして、みんなやりたいことをやっていて、私もそうしたいと思ったときに、私自身小学校の時にイジメられていたから、教育に興味があり、もっと楽しい学校を作りたいと思ったんです。でも教育というと、先生になったり政治家になったりしないといけないのかな? って思って、大学1年の時に政治家の秘書をやったりしたのですが、女性だから厳しいのではないかとかと自分の中で模索している時に、色々な哲学や思想の本を読みあさったんです。で、夜寝ないで色々と悩み続けていたときに、日本という世界だけじゃなくて、世界には生まれた時点で運命が決まっている人達がいるんだという事実がとても衝撃的で、少しでもその人達の役に立てないかと世界に目が向いたんです。そしてそこから、「なんで貧しい国は貧しいんだろう?」という勉強を少しずつ始めて、4年生の時にワシントンにある国際機関で少しだけ仕事をする事になったんです。

山口絵理子

山口さんの中で、教育というテーマを掘り下げていったら、バングラデシュがあったんですね。ではまたそこからシンプルに教育に戻ってくるかもしれないですね。

ええ。やりたいですね!!

山口絵理子

小学校の時から、ずっと色々考え続けているじゃないですか。同い年の人達と話合わなくないですか? (笑)

おっしゃるとおりで、友達いません… (笑)

山口絵理子

いろいろな人との係わり方なんですが、自分と意見や、考え方、感覚、センスなどで違う人と係わらなくてはならないときって、悲しくなったり、つらかったり、イライラしたりすると思うのですが…

私は割り切っていますね。もちろん最初の頃はバングラデシュの工場で、自分の指示したとおりにやってくれないとき、「なんでそんな事わからないの??」って言ったりもしたんです。自分にとって常識だった事がわからないから、裏切られた事も沢山ありました。でもそんな中で、“怒っても変わらない”という事がわかったんです。その工場には、世界中からバイヤー(商品の買付けや開発をする職種の人)が集まってきていて、みんな怒鳴りつけるように工場の人達に指示しているんです。でも実際は何も向上していなかったから、私はそれではいけないんだと思って、みんなと同じ目線に立って会話をしたり、ご飯を食べたりしたんです。そんな中で、みんなと家族のようになりながらも、「ここはこういう風にしたら良いよね!」とか「お客さんはどう思うかな?」とか繰返し話し合いながらやっています。みんな仲間で同じゴールに向かっているという意識を共有しなければ、高い品質の物はできないと思います。だからみんなチームなんです!!

山口絵理子

4.中高生へのメッセージ

これからの日本、日本人はどのように進んでいったらいいと思いますか。

色々なところで講演をやらせていただいていてわかるのが、日本人はあまりにも周りを気にし過ぎだなということを感じさせられます。「そのエネルギーはどこから来るんですか!?」って質問をされるんですが、「私は自分が決めた事で、その決めた事に対してのコミットメントだから、自分の尺度で絶対に曲げたくないんです。」と答えいているんですが、みんな“自分”というのが抜けてしまっているような気がします。私はとことん“自分の心に聞く作業”というのをやるんですけど、自分の弱い部分と向き合わなくてはいけないし、それって結構苦痛じゃないですか。今、多くの日本人がそういう事をやらずに、他人の答えをあたかも自分の答えのように振りかざして上手くやっているように見せているという人達が沢山いるように思えます。
 だけど本当の答えって全部自分の中にあるんですよ。だから、周りの雑音を気にするんじゃなくて、とことん自分の心に踏み込んで、悩んで悩んで、悩みぬいた先にあるものって、絶対に軸がぶれていないと思うんですよね。色々な人と話をしていても、そういう自分というのが無いなって思います。

山口絵理子

最後に、部活の先輩として中高生へメッセージをお願いします。

遊びでも非行でもいいですが(笑)、 100%全力で何かをするということを一度はやってほしいです。人間はすごいポテンシャルを持っていて、わたしもまだ1割位しか出せてないと思っているので、自分の良いところが自覚できたら、それに我武者羅にやっていったらいいと思います。

山口絵理子

ありがとうございました。

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