YELL 部活応援プロジェクト [エール]

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2007年5月~2018年3月、日本を代表するトップアスリートのインタビューはこちら!

平尾 誠二

ラグビー : 神戸製鋼コベルコスティーラーズ総監督

スポーツにはそれぞれ名作がある。野球といえば「タッチ、ドカベン」、サッカーには「キャプテン翼」、ラグビーというと、1984年にTBSで放送されたテレビドラマ「スクール☆ウォーズ」がある。また、スポーツには、そのスポーツを代表する人物が存在する。野球には「王、長嶋、イチロー」、サッカーなら「カズ、中田英寿」、そして、ラグビーといえば「平尾誠二」だ。
ということで、今回のターニングポイントは、平尾誠二・神戸製鋼コベルコスティーラーズ総監督です。ラグビーを通じて学び考えた平尾監督の、わかりやすく面白い痛快なお話を、どうぞ!!!

1.好きな事をやってないやつは頑張って二流止まり

平尾監督は、中高大とラグビー一筋ですが、ラグビーを始めようと思ったきっかけは何かあったのですか。

実はたいしたきっかけはありませんでした。小学校の時に野球をやっていたので、中学でも野球をやろうと思っていたのですが、あまりにも部員が多く、野球部に入った同級生たちを見ていると、野球が出来ずにボール拾いなどの下積みをしているんです。私は昔から、そのような日本スポーツ界独特のしきたりが大嫌いだったので、そんな時にラグビー部を見たら、12、3人しかいなくて、しかも先生が若くてとてもいい先生で、楽しそうに練習をしているんです。最初はラグビーに興味を持ったのではなく、ラグビー部という集まりに興味があって始めたのがきっかけなんです。
当時も今も私は、スポーツは楽しいからするのであって、つまらなかったらするべきでは無いと思っています。つまらない事をいくらやっても上手くならないですし、どんなに才能があっても二流止まりです。そんな事をいつまでもしていても、自分の本当に好きな事は見つからないですよね。

平尾誠二

高校では、強豪ラグビー部で有名な伏見工業高校でラグビーをされていますが、その時も楽しく練習が出来ていたのですか。

それが一変するんですよ。山口良治監督の練習は並みのきつさではありませんでした。あの練習を我慢できたら、世の中でおこる大抵のことが我慢できるという位のきつさでしたね(笑)。中学の時とまったく状況が変わってしまったので、その時は鬱(うつ)のような感じになってしまいました。でも僕自身が親の反対を押し切って入学したわけなので、それに対する責任もあるし、途中でやめられないという気持ちでやりとげた感じです。
ただ、そのような経験をしたことによって、大事な事が見えてきたのだと思っています。

平尾誠二

中学と高校では、ラグビーに対する気持ちが変わってしまったんですね。

始めは高校に入った時もラグビーは好きだったんですよ。でも人間は練習に対して、やりたい量とやらなくてはいけない量のバランスがあって、やりたい量が多い時は、いくら練習をしても足りない位に感じるのですが、やらなくてはいけない量がそれを圧倒的に上回ると、気持ちはなえるんですよね。
今は指導者という立場なので、なんでそれをやるのかという意味を説明します。やらなくてはならない事をやらないと強くはならないですからね。

平尾誠二

2.出来ないという事は考えない

一番嬉しかったなど印象に残っている思い出とかはありますか。

特にはないのですが、中学一年の時に初めて自分のお小遣いを使って、京都のラグビー祭で行なわれた試合を見に行ったことがあったんです。綺麗な芝生の上で中学生が決勝戦をやっていて、自分たちはいつも汚い土の上でばかり試合や練習をしていたので、ここまで強くなれば芝生の上で試合が出来るのかと思って、そこで出来るようになるにはどうしらいいのかを自分の頭で考えるようになったんです。それからは練習も、仲間集めも積極的にしました。そして毎年10月10日に行なわれるその場所に、中学三年の時に立てた時は感動的でした。

平尾誠二

普通はそう願っても出来ることではないですよね。

出来ないという事は考えないです。出来ない理由を考えたら、理由は山ほど出てきますから、“やろうと思ったらやる”という事しか考えませんね。あとは本気になるかどうかです。

平尾誠二

そういう意識は、いつ頃から持ったんですか? 生まれた時からあったんですか。

それは分からないですけど(笑)、欲しいものがあったら手に入れたいという気持ちは元々強いです。

平尾誠二

大抵の人間は、あきらめる事が多いじゃないですか。

僕にはそういう考えはありませんね。

平尾誠二

平尾監督は人生の中で、無理だと思ったことはないんですね。

あるけれども、そんな事は最初から願わないですよね(笑)。

平尾誠二

3.デザインの勉強をしにイギリスへ

大人になってもラグビーで食べていきたいと思っていたんですか。

ラグビーは大学まででやめようと思っていたので、そんな事は全然考えていませんでした。
大人になったらラグビーとは違った、自分にしか出来ない仕事をしたいと思っていたので、大学を卒業してイギリスに留学したんです。そしてデザインが好きだったので、デッサンの勉強をして家具のデザイン学校の試験を受けようと思っていたら、日本からアマチュア資格の問題で電話がかかってきたんです。

平尾誠二

アマチュア資格の問題ですか?

日本にいる時にファッション雑誌の取材を受けていて、私は聞いていなかったのですが表紙になってしまっていて、それがアマチュア資格の規定に引っかかる問題だというんです。もちろん取材料なども頂いていませんでした。
でも、私は日本でラグビーをする気が無かったので、アマチュア資格が無くなってもいいと思っていたんですが、イギリスでもラグビーを出来ないぞ! と言われたので、誤解を解きに日本に帰ったんです。

平尾誠二

それはつらいですね・・・

自分の思いとは全然違うところで、そんな問題になってしまったので、本当は、イギリスでデザインの学校に通いながら、自分の実力が世界ではどの程度なのかも知りたかったので、2、3年はラグビーをやりたいと思っていたんです。
ですがそのような問題が起き、誤解を解くには日本で名のあるチームでラグビーをやる事が大事だと言われ、そんな時に神戸製鋼から熱心に誘って頂いたので、神戸という街が大好きだったこともあり入社しました。

平尾誠二

監督は京都ですよね。京都の人も神戸に憧れるんですか(笑)?

憧れるというか、シンプルに神戸に住んでみたかったんです。小学校の遠足で初めて行ったときから雰囲気が好きだったんですよ。

平尾誠二

4.試合で緊張しない方法

試合前、緊張をほぐすにはどうしたら良いでしょうか。

緊張するのは、いい格好しようと思っているからなんです。自分そうだったから言えるんですよ(笑)。試合で普段の実力以上の事をやろうとすれば誰でも緊張します。だから、普段通りの実力を出すだけでいいんです。
例えそれで試合に負けたとしても、死にはしないし、また次があります。試合で大事な事は、悔いを残さないことです。

平尾誠二

勝ちたいと思ってのぞむ事ではないんですね。

当然勝ちたいと思ってプレーするんですが、自分の実力以上の事は期待しない方がいいです。普段の実力を試合で出すだけなんです。ダメだったら次の機会に試す。でもまたダメだったらまた次に試す。そして達成できたら、それは自分の実力になっているという事なんです。それを繰り返して、次の目標を目指して普段から実力をつけるように頑張って向上していくという事だけなんです。たとえ出せなかったとしても、世の中が変わるわけではないし、深刻になる必要は一つも無いです。その位の気持ちでいったほうが勝つんですよ。
指導者も試合前にあれこれいうようじゃダメです。持っている力を出せばいいだけだと試合前に言ってあげればいいだけなんです。その位広い度量をもってほしいですね。

平尾誠二

指導者へのメッセージですね。

「おまえたち、ここで負けたら恥だぞ!!」とか言う監督がいたとしたら、それは選手の恥ではなくて、監督の恥なんですよ。そんな事をいう指導者がいたら、センス無いことを言う監督だな、そんな事二度と言わせるかと思ってやったらいいですよ(笑)。

平尾誠二

5.キライな事をやっても上手くならない

落ち込んでいる時は、どうしたら元気になれるでしょうか。

気にするなとしか言いようがないですね。 「たとえ、おまえが死んだとしても世の中は明るく生きていて何も変わらないんだから」って言いますね。「そんな事より、自分の実力を出してこい! はちきれんばかりに走れっ!!」と言います。

平尾誠二

結果は気にせず、好きな事を目一杯やれという事ですね。

人間は、本当に上手になりたいと思ったときにこそ、学習能力を発揮するんです。些細な事にも気がついて対応し、向上していくのです。でも、向上心の無い人や、仕方なくやっている人は、やったフリをしているだけなので、上手になるはずありません。中高生が部活をやるのなら、自分の一番好きな事をやってほしいですね。

平尾誠二

では、好きな事が見つかっていない人はどうしらよいのでしょうか。

あらゆることにトライしてみたらいいと思います。好きになる部分がどこにあるかは、わからないんですよ。たとえば、私みたいにラグビーという“競技”ではなく、“チーム”が面白そうだから入ったという事でもいいですし、先生に“ほめてもらう”のが嬉しくてやっている、という事でもいいと思います。
授業が大好きで受けているという中高生は少ないと思うので、せめて部活は面白いことをやった方がいいです。勉強も部活も仕方なしにやっていたら、人間性がおかしくなってしまいますよね(笑)。

平尾誠二

好きな言葉とかはありますか。

山口良治監督に言われた言葉で、「手を抜くな」という言葉がありました。大差で勝っている時の試合でも叱られたことがあるんですが、人間は全力を出すから力が増えると言うんです。10ある力を今日ここで全部出し切ったら明日は10.01になる、そしてまたそこで全部出し切ったら、次に日には10.02になると言うんです。逆に10ある力を9しか出さずに終わったら、次の日には9.99に目減りすると言うんです。そこがお金と違うところで、お金は使わなければたまっていくだろ! って言うんです(笑) 僕にとっては一番心に刻み込まれた名言です。
「力を出し切れ!出し切らないと力は増えない。人間力とはそんなもんだ」
この言葉が今までで一番、僕に刻み込まれた名言です。

平尾誠二

6.部活のお話+いろいろ。

部活動は中高生にとって大事でしょうか。

部活とは自分が主体的に参加するものですから、出来れば楽しいこと、やりたい事の方が良いです。主体性は、これからの時代、一番育まなくてはいけない大切な部分だと思います。
仕方無しにやるのは勉強だけにして、学校が終わった後の部活やデートは、自分の主体性でやるものなので、こういう部分が人間の頭を良くするんです。どうしたら相手が喜んでくれるのかな? どうしたら上手になれるかな? とか。こういう部分に何も感じない人は、いくら勉強が出来ても知恵が働かないです。

平尾誠二

僕は、部活って肉体的に追い込まれることで精神面が強くなるので大事だと思っているんです。社会人になったとき、その時のつらかった練習を思い出せば、たいしたことないと思って頑張れると思うんですよ。

僕はあまりそういう考え方はしないですね。部活をやって学んだことの一つとして、どっちが損でどっちが得かを考えるようになりました。例えば「おまえ頭からタックル行け!」と言われたときに、頭からいく時の痛さなのか、いかなかったときに、後でしばかれる痛さなのか、どっちが痛いかという事を考えて判断できるようになりました(笑)。

平尾誠二

どっちが痛いんですか(笑)?

その時の状況によります(笑)。その加減の関係も、一つの学習だと思います。子どもなりにそういう事がわかってくるんですよね。

平尾誠二

平尾監督は選手に自由にやらせているように感じます。その反面、とても厳しい監督とも思いますが…。

僕は厳しいです。でも厳しい練習をする時は、理由をきちんと説明して、それを越えさせます。逃げ道も作りません。ただ、やって良かったと思わせないとやっている意味が無いと思うので、やったらいい事があるということ、目標に近づくという事をはっきりさせます。コーチの役割ってそういう事だと思っています。意外に、コーチをやっている人で、自分のエゴだけでやっている人がいます。自分の思いや伝統などを言う人がいますが、それは大きな間違いです。

平尾誠二

先輩はこうあるべきだ、というのはありますか。

後輩が理想とする先輩になれたら幸せですね。でも、いい格好したら駄目です。長続きはしないですから、普通にしている中でそう思ってもらえるようになれるのがいいですね。一番ダメなのが、一コ上だからとかニコ上だからとかで偉そうにするやつ。最も人望の無いタイプですね。

平尾誠二

7.ターニングポイント

今までの人生の中で一番のターニングポイントを教えてください。

一日一日にターニングポイントはあるんですが、高校の練習が一番きつかったときに、目線を変えて、その事に自分から頑張りだした事です。それまでは練習をさせられていたんです。きつい練習の毎日で、きつくてきつくて大変なんです。そこでラグビーに対して考えたんです。ラグビーはキライじゃないのに、何でこんなにキライになったのかって。そこで気づいたのが、やらされているからキライになったという事だったんです。それからは自分からやり始めたので、きつくなくなって、やったらやった分だけ強くなっていく自分を自覚できたんです。
これは世の中すべてに言える事で、周りが変わらない事に対して文句を言うのではなく、自分の実力が足りないからだと頑張ることが出来たら、絶対に状況は変わります。走っている量は前と変わらなくても、自分はもっと大きくなっているので感じなくなるんです。

平尾誠二

最後に中高生へ一言でメッセージをお願いします。

楽しい事をいっぱいしろ! もしキライな事でやらなくてはならないことがある時は、好きになれ!

平尾誠二

ありがとうございました。

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