やんちゃな中高生時代

ターニングポイント２回目のゲストは、千葉ロッテマリーンズのTSUYOSHI選手です。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。

最初に、TSUYOSHI選手と野球との出会い、始めるきっかけを教えて頂けますか？

出会いは幼稚園の頃です。五つ上の兄が野球をやっていたので、その影響で野球を始めました。もし兄が、サッカーをやっていたら、僕もサッカーをやっていたと思います。

身近にいる兄弟の影響は大きそうですね。そのまま中学生時代も野球を？

はい、野球をやっていました。

中高校生時代の部活での思い出は？

中学３年の最後に全国大会に行った事と、高校３年の夏に甲子園に行った事が思い出ですね。

中高生の頃はどんな子だったのでしょうか？

なにしろ活発で、やんちゃな子でしたね。その、やんちゃの内容は･･･、秘密です（笑）。

やんちゃってことは、元気いっぱいということですね（笑）。

そうです（笑）。学校から帰ると、毎日野球をしていました。父が消防士ということもあって、勤務した次の日の朝に帰宅します。ですから、僕が学校から帰ってくるといつもいました。そのときに、父と野球をやっていました。

中高生の頃は大きくなったら何になりたかったですか。

プロ野球選手ですね。すでに幼稚園の頃からプロ野球選手にあこがれていました。

その時の仲間とは、今も仲良しですか？

はい。まめに連絡を取りあっています。大阪に戻った時には会うようにしています。

いまだに仲がいいということですね。

ええ。最近の話もしますが、やっぱり思い出話をよくします。あの頃カッコいいと思ってやっていたことが、今考えると「ダサいことしたな」と思ったりもします（笑）。

プレッシャーを楽しむ

初めて『プロ野球選手』を意識したのはいつ頃ですか？

高校２年生の時に、「いけるんちゃうかな！」って自分の中に芽生えてきました。

それはどのような時がきっかけだったのでしょうか？

日々、試合を重ねるごとに、そう感じる事ができるようになりましたね。

確かな手ごたえや、自信があった、ということですね。

自信はありましたね。高校生のときはけっこう打てたので、プロに入るまでは自分が一番だと思ってやっていました。でも、プロの現実は思ったよりも厳しい世界でした。

試合前は緊張するほうですか？

それほど緊張はしません。むしろ、そのプレッシャーを楽しむようにしますね。

プレッシャーを楽しむ？

ええ。野球というスポーツは、３割バッターがスゴイって事になります。ということは、いくらチャンスが回ってきても、１０回中７回は失敗する訳です。

なるほど。確かにおっしゃる通りですね。

しかし逆の発想で、１０回中３回でも打てれば「すごいバッター」と言われるスポーツという事です。ですから僕は、失敗を恐れずに、プレッシャーを楽しみます。

前向きな姿勢が大切にしているという事ですね。

確かに、チャンスの時に打てなくて負けたりしてしまうと、自分のせいだとか自分がくやしくなる事が有ります。そういう時は、そのくやしさを忘れずに、試合が終わった後に練習して、次の日には切り替えてやったら良いと思います。

では、不眠や食欲不振とかは？

そんなの全然ないですよ（笑）。ただ、普段から練習をしていないと、いざチャンスが回ってきた時に『どのように打とう？』とあせりや迷いが出てくるものです。そのときに、日頃からしっかり練習しておけば、『オレはここまでやってきたから打てるぞ!!!』という自信が出てくるものです。

常日頃の練習が自信につながる･･･

そうです。野球だけではなく、おそらくスポーツ全般に言えることだと思いますが、チャンスのときにこそ、日頃の練習や努力が生きてきます。

チャンスで追い込まれるシーンもあると思います。その時は、どのようなことを考えますか？

たとえ追い込まれても、『打ってやるっ!!!』としか考えていませんね。

初心を忘れない

TSUYOSHI選手は、落ち込んだりする事はありますか？

そりゃあ、もちろんありますよ（笑）。

そういった時は、何を考えていますか？

大切なのは、原点の気持ちに戻る事ですね。僕はどうして野球を始めたんだろうとか、なんでスポーツをやったんだろうとか。誰でも始めたきっかけは、それが楽しかったからだと思います。その頃の初心の気持ちを思い出してほしいですね。

「初心忘れべからず」という事ですね。

ちょっと厳しいかもしれないけど、そこで楽しい気持ちが戻ってこないならやめたほうがいいと思います。僕もプロに入って、それが仕事になると楽しむって事が出来ない部分も多少あります。でも、優勝した時にすごく楽しかったんです。ですから『楽しまないとアカンな』と、その気持ちが一番大事だなと思いますね。

楽しむこと、簡単そうで難しいですね。<

そうですね。プロ野球選手は結果を出せば、お金をもらえますけど、結果が低いとき、お金を追ってしまうので、お金を追わずに野球を楽しめば、結果的にはお金が付いてくると思ってやっています。

今までに、野球をやめたいと思ったことはありますか？ また、踏みとどまれた理由は？

野球人生の中で、たった一日だけあります。僕は中学から高校に入るときに、ずっと行きたかった高校がありました。しかし、セレクションを受けて断られた時に、「もう、やめてやる！！」と思いました。

その高校に、相当な思い入れがあったという事ですね。

僕は小学校３年の頃から両親と一緒に、その高校に入るためにずっと野球をやっていました。甲子園より、プロより、まずその高校に入るという事を目標に毎日やってきたので、その高校から断られたとき、明日からは野球をやめようって思いました。

さすがに落ち込みましたか。

ええ。部屋に一日中閉じこもっていました。でも、次の日起きたら、その高校が倒したくなって仕方がなくなっていましたね。時間がたつにつれて逆に倒したくてしょうがなくなりました。

目標が変わったという事ですね。

はい。僕は特別甲子園を目標にしていませんでした。行きたければ、もっと強いチームに入っていただろうし。あえて、その高校と同じ地区にある、その高校と戦えそうな学校はどこかなと考えたとき、大阪桐蔭だったので、その高校に入りました。

その頃の練習はどうでしたか。

うーん、それはもうとんでもなくきつかったですよ。ランニングなどの走る系は一番つらいですよね。プロになってからより、この頃の方がはるかに苦しかったです。

つらい練習をする時期っていうのはアスリートにとっては必要ですか。

それは間違いなく必要です。おじいちゃんおばあちゃんが、若い頃に苦労しろっ！と言いますけど、本当にその通りだと思います。さらに一番つらくても辛抱してやっていけるのが中高生の時期だと思います。

印象に残っている恩師の言葉や好きな言葉、などはありますか。

僕はいつも『先憂後楽』という言葉をリストバンドに入れてプレーしています。

それはどなたの言葉ですか。

父親です。

ところで、何か、げんかつぎなどはしていますか。

僕はそういった事はしませんね。<

盗塁王、そして優勝

野球をする上での、モットーはありますか。

やはり、「プレーを楽しむ」という事と、いつも応援して下さるファンの皆さんがいるので、ファンのみなさんに感謝する事ですね。

今後、戦いたい相手、舞台はありますか。

特にはありません。ライバルは自分です。自分に負けたら結果も出ないですからね。

プロになって一番うれしかったことは何ですか。

プロ３年目で、優勝して盗塁王取った年が一番嬉しかったですね。高校からロッテに入って１、２年目は、僕はずっと２軍にいてファンも少なかったし･･･

何か転機があったのでしょうか。

３年目にボビー監督が来て、ファンのお客さんも増えてきました。優勝できた３年目というのはすごく嬉しかったですね。

では、最も辛かった事は。

一番辛かったのは、１年目の２軍生活の時ですね。ただ当時はすごい天狗になっていて、自分はプロ野球選手だという気持ちでいました。ただ周りからは、「１軍にいて試合に出て、始めてプロ野球選手だ」と言われていましたね。

１軍と２軍の受け止められ方の違いですね。

僕は２軍にいても、プロ野球選手だと思っていたし、正直いい車に乗っていました。しかし、そういう部分もふくめてプロの世界は違うなと鼻をへし折られましたね。

練習の辛さはどうですか。

今はシーズン１４６試合あるので、試合終わってからも練習はしますけど、疲れを次の試合に持ち越すわけにはいかないので、そのコンディション作りは中高生のときよりプロの方がやりやすいですね。

普段からウェイトトレーニングはされているのでしょうか。

シーズン中は全くやりませんね。シーズンオフの２ヶ月間だけやります。筋トレでの筋肉の使い方と、野球での筋肉の使い方は違うので、僕は筋トレより、バッティングの練習を増やします。

野球の魅力とは

野球のどこ（何）が好きですか？また、中高生へ向けて、野球の魅力を伝えるとしたら・・・。

どんなスポーツでも一緒ですが、自分が活躍したときに凄い気分になれる所です。野球の魅力は、他のスポーツでは限られたタイムで試合は終わってしまますけど、野球は２アウトからでも分からない所ですね。

中高生に向けて、野球がうまくなるために、最もやったほうが良いと思う技術的な練習は。

残念ながら、一つの練習で技術があがるということは、まずありませんね。すべてをバランスよくやらないと野球は上達はしません。

中高生に向けて、野球が上手くなるために、最も大切だと思う心の持ち方は。

どれだけ自分が上手くなりたいか、その気持ちが一番大切ですね。

ターニングポイント

TSUYOSHI選手にとって、今までの野球人生の中で一番のターニングポイントをお聞かせ下さい。

中学から高校に行くときに、行きたい高校に行けず大阪桐蔭に行った事が、僕の人生のいい道を作ってくれました。その事が僕のターニングポイントだったと思います。

では、選手としての近い未来の目標と、最終目標を教えてください。

野球の世界では３割バッターが凄いと言われていますが、僕の目標は１０割バッターです。世の中に何もかもが完璧な人間はいませんよね。あのイチロー選手でさえも１０割打つ事は出来ません。しかしあえて僕は何でもできる、完璧な人間を目指していきたいです。

最後に、中高生へのメッセージをお願いします。

僕は中学や高校でしか出来ない事って、いっぱいあると思うんですよ。最近は、いじめとか自殺とか悲しい事件が多いですが、ちょっとした、心の持ちようで、中高生にはすごく明るい未来が必ず待っています。本当に努力した分は絶対に後になって自分にかえってくるので、日々一所懸命頑張ってもらいたいと思います。

ありがとうございました。