ストリートボールリーグ・LEGENDとは、3on3のプロバスケットボールリーグで、チームやリーグの枠を超えて集まった個性的なボーラー達が、ゲームごとにパートナーをシャッフルし、ポイント制で最強のストリートボーラーを決定するという、チームではなく個人のナンバー1を決めるプロバスケットボールリーグです。また、MCやDJ、レフリーが選手と一体になり会場を盛り上げ、従来のバスケットボールリーグとは一線を画すエンターテイメントプロスポーツでもあります。今回もHERO INTERVIEW では、CHIHIRO選手に、自身の中高生時代のエピソードと、現在の中高生に向けてメッセージを頂いてきました。 (取材・文/小山基彰 写真提供/LEGEND)
スラムダンクの影響でバスケ部に
2009年度・シーズン8チャンピオンに輝いた、CHIHIRO (ちひろ) 選手ですが、中高生時代は何部でしたか。
中高大と、バスケ一筋です。
数多くある部活のなかで、なぜバスケ部だったんでしょうか。
完全100%、スラムダンクの影響です。バスケを始めたのは小学校4年生のときだったんですけど、父親の仕事の関係で江田島(広島)に住んでいたことがあって、バスケを知っている大人が誰もいない環境の中、スラムダンクの影響を受けた友達といっしょに、「流川の股抜きマジやべー!」とか言いながら、裸足でバスケをやり始めたのが切欠なんです。でもまた父親の転勤で神奈川県に引っ越すことになって、その仲間には、「またいつか全国で会おう!」と泣きそうになりながらも、カッコよくセリフを決めて、転校した中学でバスケ部に入ったんです。
転校した中学校でのバスケ部はどんな感じだったんですか。
その学校の不良全員がバスケ部にいるみたいな感じだったんですけど、僕も体は大きいし小学校のときに空手をやっていたということもあって、そんな彼らとすぐに仲良くなって、荒れつつバスケしつつみたいな日々でした(笑)。
まさにスラムダンクですね(笑)。
そうですね。同級生6人全員が不良というまさにスラムダンク状態で、みんな先輩より上手なのに試合ではまったく使ってもらえなくて、そんな状況で出場した新人大会では優勝したんですけど、また転校になってしまって、その頃はかなり荒れていました。
本当にバスケが大好きだったんですね。好きだから練習するみたいな感じだったんですか? 誰かに教わったりもしていたんですか。
2度目に転校した中学校でもバスケ部に入部したんですけど、同級生の部員は多かったけど、何か物足りなさを感じていて、近所に地区センターという夜間にバスケが出来るところがあったので、そこに行ってみたら、自分よりはるかに上手な高校生たちが集まっていて、衝撃を受けるくらい上手な人がいたので、毎回通っては1on1を挑み続けていたという中学時代でした。
打倒海南!
いよいよ高校ですが、当然バスケの強い高校に行きたいところですよね。
神奈川に住んでいたので、スラムダンクに出てくる海南(高校)のモデルになった高校に入りたいと思って見に行ったんです。そしたら、スポーツ推薦で入った部員とそうでない部員とでは、練習時間など入部後の環境がまったくちがうということを知らされて、なめるな!って思ったんです。それなら湘北(スラムダンクの主人公が通う高校)に行って、海南を打っ潰してやる!って思って入学した高校のバスケ部が唖然とするぐらい弱くて…(笑)。
入学する前に調べなかったんですか(笑)?
親に連れられて行った学校説明会で、「バスケ部は強いですか?」って聞いたら、「そこそこ強いよ」って言われたので、疑いもせず入学してしまったんです。中学校のバスケ部の顧問からも、「おまえは強い高校に行くより弱い高校に行って1年から試合に出るほうが向いてるよ」と言われてたこともあって、そういう選択をしてしまったんですが、今思うとそれは完全なる間違いでした。
弱いってどれくらい弱いんですか。
先輩たちがレイアップというバスケの基本シュートをはずしまくるんですよ。僕は誰に脅かされることも無く、一年から三年までずっとレギュラーでしたから、それぐらい弱いって事なんです。
バスケが大好きで全国を目指しているCHIHIRO選手にとって、弱いって辛いですよね。そんな中一番の思い出は何ですか。
三年の春の地区大会で優勝したことです。当然、海南のモデルになった高校は県大会から出場するので、同地区とはいえ地区大会には出てこないんですけど、この弱いバスケ部で地区大会で優勝できるとは思っていなかったので、一番の思い出ですね。
部活以外ではどんな少年だったんですか。恋愛とかはしていましたか。
一応部活の決まりでは恋愛禁止だったんですけど、彼女のいる部員もいましたが、僕は部活一筋で彼女はいませんでしたね(笑)。
大人になったらこうなりたいとか夢はありましたか。
バスケを続けていくことしか考えなかったので、続けられないなら卒業した後は普通に働こうと思っていました。
答えは自分の中にある。 - CHIHIRO選手からの部活アドバイス
バスケが大好きなCHIHIRO選手ですので、部活を辞めたいと思ったことはないと思いますが、つらい練習や厳しい練習から逃げずに立ち向かっていくコツのようなものがありましたら教えてください。
つらい練習とかから逃げたりしたら、周りからなめられるじゃないですか。僕にとってはそれほど屈辱的なことはないので、つらい練習のときほど、なめるなよ!と思って立ち向かいます。コツとしたら、自分と一緒にそのつらい練習に立ち向かえる仲間を作ることが一番だと思います。そしてそういう時こそ自分を省みるときだとも思います。絶対に答えは自分の中にあるから。
「答えは自分の中にある」ってとてもいい言葉ですね。
実はWORST(ワースト)というマンガに出てくる大家さんのセリフなんです(笑)。
「何で俺はあいつらみたいにケンカが強くないんだろう…」といった狐顔のやつに大家さんが、「俺がキムタクの顔だったらモテルのにな~」って言うんですね。で、「それは話がちがうじゃないですか!」って返すと、ガツーンと大家さんが狐顔を殴って、「一緒だ! 人をうらやむな!嫉むな! 人生全部の答えは自分の中にあるんだ! そんなことばかり言っていると腐った人生をおくっちまうぞ!!」ってところがあるんですけど、それを読んだとき本当にそうだなって思ったんです。今ある自分を受け入れないで、周りの人や環境のせいにばかりしていると、まったく自分の為にならないですからね。
本当にその通りですね。今の自分を受け入れることって一番大切ですよね。
僕にとっての最高の夢はNBA選手でしたけど、そうでなかった今も最高の人生だって言えるんで、この言葉を中高生に送りたいです。
とても素敵な考えですね。ところで試合前や試合中の緊張とはどのように向き合っていますか。良い対処法がありましたらお願いします。●
僕は大声を出すようにしています。LEGENDに出場する選手の中でも一番大声を出していると思います(笑)。大声を出すと、ネガティブな気持ちが吹っ飛ぶんですよ。
LEGEND
LEGENDについてお話を聞かせてほしいのですが、他のバスケリーグや、プロスポーツには無い、CHIHIRO選手から見た、LEGENDの魅力とは一体なんでしょうか。
まずは叫びですね。他のバスケリーグではどんなにすごいシュートが決まってもクールにそのワンシーンが過ぎていきますが、LEGENDの場合、普通のシュートでもすごい歓声と叫びがあります。体育館でこんな大声を出して大丈夫?ってくらい叫ぶので分かりやすくて楽しいですよ(笑)。
お客さんとして観に行った場合の楽しみ方ってあるんですか。
とても自由なので、決まった観戦スタイルが無いんです。初めて観に来てくれたお客さんに向けてもとても分かりやすくなっています。そして試合のスタイルも、劇的な名場面の連鎖のような形になっているので、気が抜けるところがなく、最初から最後までハラハラドキドキしっぱなしといった感じです。
LEGENDの選手はみんな違った方向性でキャラ立ちしているので、素人が見ていても分かりやすさがありますよね。CHIHIRO選手も、これでもかってくらい1on1で挑むじゃないですか。大相撲の千代大海関のツッパリみたいで、十八番を出しまくっての勝負のような感じがして、とても面白いですよね。
LEGENDに所属している20人あまりの選手全員がまったく違った個性を持っているので、通常のバスケのチームプレーがオーケストラだとしたら、LEGENDは個人が集まって即興でやるジャズセッションみたいなイメージです。今日の味方が明日の敵にもなるので、それぞれが個性を出し合ってプレーするのは、観ていてシンプルに楽しいですよ。
CHIHIRO選手がLEGENDのプロボーラーとして一番大切にしているものはなんでしょうか。
CHIHIRO=1on1なので、芯がぶれない事が大切だと思います。自分のスタイルじゃないプレーをして勝つより、たとえ負けたとしても自分のスタイルを貫き通すことが一番大切だと思ってプレーしています。
今後の目標はなんでしょうか。
実は今探し中なんです。僕の中高大のバスケ人生は負けばかりだったので、このままじゃ終われないと思って続けていたら、今年LEGENDでシーズン8チャンピオンになれたので、やっと自分の存在意義を証明することが出来て、今は次の目標を探している最中なんです。
部活が一番大事!
HERO INTERVIEW は、「部活」をテーマにしているんですが、部活は中高生にとって大切だと思いますか。
めちゃめちゃ大切です。僕は学校の先生をしているので、こんな事を言ったら怒られると思いますが、学校行事やクラスの行事など、どんな事よりも部活が一番大切だと思っています。部活でしか経験できない事って多いですから。
今までCHIHIRO選手が部活を続けてきた中で、どのような指導者がベストだと思いますか。
トップの選手ばかり見ている先生じゃなくて、下のやつらをどんだけ救ってやれているかが良い先生だと思います。/p>
理想的な先輩像ってなんでしょうか。
背中で語れる先輩ですね(笑)。僕が語れたかといったら?ですが、中高生くらいの時は言葉じゃなくてプレーで見せられる事が先輩として大事だと思います。
ターニングポイント
CHIHIRO選手にとって、今までの人生の中で一番のターニングポイントをあげるとしたら、いつでしょうか。
いくつかあるんですが、LEGENDでは2年前のシーズン6の最後のイベントで、ATSUSHIさん(LEGEND初代チャンピオン。リーグを代表する象徴的存在)が僕をチームメンバーに選んでくれたときが自分にとってのターニングポイントだとおもいます。そのゲームで本当に色々なことを教わったし、感じることができたんです。それがなかったらシーズン8でもチャンピオンになれていないと思います。
もう一つあるんですね。
それはLEGENDに入る前なんですけど、中高では弱いバスケ部でプレーしていたので井の中の蛙だけど負け知らずだったのが、大学のバスケ部に入部して早々Bチーム(2軍)行きを言い渡され、周りの部員と比較しても自分のバスケの才能の無さに挫折を感じた時が、もう一つのターニングポイントだったと思います。あの時に「負けた」ことで、反対にバスケを続けることができた。もちろん、そんな状況でも一緒に頑張れた仲間がいて、とても充実した4年間でしたよ。
最後に、中高生へのメッセージをお願いします。
3年間はあっという間だし、今しかないから、自分の全てがかけられる何かを見つけてそれに全力をそそいでください。感動が無ければ人生じゃないから。
ありがとうございました。