ハイレ選手の国、エチオピアとは
ハイレ選手が陸上を始めたキッカケはなんでしょうか。
私が産まれたところは、家の周りに何もない、生活に必要な水を3時間かけて組みに行くような、エチオピアの田舎で、学校も10キロ離れたところにあったので、毎日走って通っていました。だから陸上をやろう! と思ってはじめたというより、生活環境の中に陸上があったという感じです。
すごい環境ですね。日本人には想像できません。
電気も無いし、電話なんてぜいたく品です。学校まで片道10キロ、往復で20キロ。それを10年間。そうして私は10000メートルの選手になったんです。
12才の時、初めてクツを買ってもらう
日常の生活の中に陸上があったんですね。
11才までは裸足で生活してました。兄弟は私を含めて全部で10人。母親が一人で面倒を見るんです。だから初めてクツを買ってもらったのは12才の時でした。その時はとっても嬉しくて、母親に感謝しました。
初めて陸上の試合に出たのはいつですか。
14才の時に、学校内で1500メートルの大会に出たのが初めてです。参加者の中では一番年下だったんですけど、優勝したんです。そしたら次に学校代表として学校対抗の大会に出場して、そこでも一位になって、トロフィーを学校に持って帰ってきたんです。うれしかったですね。
その頃、日常の生活の中で走っていたそうですが、それ以外にも練習していましたか。
その頃はまだトレーニングはしていませんでした。学校往復の20キロだけ。でもその20キロは真剣に走っていました。
トレーニングになるから?
いいえ、遅刻すると学校の先生から棒で打たれるので、それがとっても嫌で(笑)。だから必死に。
ちなみにエチオピアの学校には部活ってあるんですか。
ありますよ。日本ほどたくさんは無いですけど、サッカー部、バスケ部、そしてマラソン部。
ハイレ選手は。
サッカー部でした。エチオピアで一番盛んなスポーツはサッカーなんです。だから私も中学まではサッカー部で活動していました。でもしっくりこなくて、高校生になってからは一緒に走る友だちがいれば、走っていたという感じです。
練習をする中で、つらかったことはありますか。
スピードワークはきびしかったですね。400m、300m、100mを繰り返し走る練習はとってもきつかったです。
青山学院中等部・高等部 陸上競技部 部員からハイレ選手への質問
大切な試合で勝つために一番大切な事はなんですか。
目標、ゴールを決めることが大切です。でも目標を決めたからといって、願うだけではダメです。大切なのは目標に向かって、規律を重んじ、日々努力を積み重ねること。 三つの要素、ゴール(目標)、規律、努力は、共に存在しなくてはなりません。今日は1000mを3本やろう! コーチがそう言ったら、例え2本目で限界を感じたとしても、最後までやり抜くことが規律です。試合に勝ちたい、そう試合当日に思うのではなく、積み重ねてきた練習をその試合に出すだけ。試合までにやり残したことが無いということが勝つための秘訣です。
ハイレ選手がマラソンを通じて学んだことは何ですか。
忍耐強くなったことです。5000メートル、10000メートルの選手だったころは、他の選手を気にして走っていました。でもマラソンは、対人の競技ではなく、対距離の競技なんです。だから試合当日、スタートの1キロからゴールの42.195キロまで、どこに問題があるのか走ってみないとわからないんです。
ハイレ選手が中高生時代、ちょっと変わった練習をおしえてください。
かなり広い距離でかくれんぼしていました。だから捕まえるために、かなりの距離を走らなくてはならないんです。かなり大変な遊びでした(笑)。
陸上に対する思い
ハイレ選手がプロの陸上選手を目指したキッカケは。
モスクワ五輪で、10000メートルと、5000メートルで金メダルをとった、ミルーツ・イフター選手に憧れて、彼のようになりたいと思ったのがキッカケです。
その頃の夢ですね。でもそれ以上の結果ですよね。
はい。中高生時代は、世界級のアスリートになりたいと思っていました。でも自分が思い描いた以上の結果を出すことができました。それはとても嬉しい事です。
陸上をやめたいと思ったことはありますか。
一度も無いです(笑)。
陸上の魅力はどんなところですか。
陸上は記録の勝負なので、人のせいにすることができないところですね。
中高生へのメッセージ
今回、日本の学校に来てみて、何か感じたことはありますか。
こうして日本の学校に来てみると、全てが揃っている。エチオピアと違ってね(笑)。だから、走り続けていれば、必ず結果は付いてきます。ただし、走り続けていればね。私は、11才までクツを履いたことが無かったけど、27回の世界記録を作りました。オリンピックで2回金メダルをとって、世界選手権で4回、インドアの選手権で5回優勝しました。だからこそそう感じるんです。
最後に、中高生へのメッセージをお願いします。
トレーニングも勉強も、毎日続けてガンバってください。みなさんのご両親も、日本の国も、みなさんに期待しています。みなさんぐらいの年は、”ファイヤーエイジ”と言われていて、今後の人生が決まってしまうぐらい、とても大切な期間です。そして大人になってからも思い返すことの多い時期でもあります。将来活躍できる大人になりたい!と思っているのなら、今こそガンバる時です。みなさんそれぞれに夢があると思います。その夢に向かって、努力し、律して頑張ってください。 いいね!
ありがとうございました。