エース願望の原点

棚橋選手は高校時代、野球部で活動していたそうですが。

岐阜出身なので、家族全員、地元中日ドラゴンズのファンで、僕も小学５年生の頃から、将来はプロ野球選手になるぞ！ って決めてから、高校卒業までずっと野球一筋でした。

ちなみに野球のどこが魅力的だったんですか。

小松辰雄とか郭源治とか、ドラゴンズには魅力的な選手がたくさんいたので、オレもああなりたい！ って思って。

あ、バッターじゃなくて、ピッチャーに憧れてたんですね！

エース願望が強くて、それが今にもつながっているんですけど、結局野球をやっているときは、自分よりも上手な人がたくさんいたので、エースにはなれなかったんですけど、でも背が高かったので、ファーストとか外野をやってました。

棚橋選手は、見た目とても打ちそうですけどw！

打つのは好きだったんですけど、打たなかったですね。

守備が上手だったんですね！

守備もヘタでしたね。

何が持ち味だったんですか？

見た目は良かったですね！ 野球うまそうだね！ ってw。

部活の思い出というといろいろあると思いますが。

チームだと、３年の春季大会で県でベスト４になったことが嬉しかったですね。個人では、小学校、中学校とずっとかなわなかったエース願望が、高２の時にやっとかなって、ピッチャーデビューしたんです。でもエースではなかったんですけど、高校だと一日２試合練習試合をしたりするので、一試合目にチームのエースが投げたら、二試合目は僕が投げるっていう形で、念願がかなったんです。嬉しかったですね。ちなみに僕が筋トレを始めたキッカケは、ピッチャーになりたかったからなんです。筋肉がついたら速い球が投げられるって信じていて、中２の時から市のジムでガンガン鍛えはじめて、それなりに筋肉がついたんですけど、結局ストレートがMAX120キロ位で、おまけにコントロールが悪かったので、途中からサイドスローに変更させられました。イメージでは上から投げ下ろす本格派ピッチャーだったんですけどねw。

部活というと、”キツイ練習“ですが。

ピッチャー練習の方に加わらせてもらっていたので、走り込みが中心で、50メートルダッシュを100本走れって言われた時があって、２時間位走り続けていたことがありましたね。今やれって言われたら、ムリですけどねw。

部活以外ではどんな男子だったんでしょうか。

わりとモテましたね。はい。さらっと言いますけどw。
自分が好きな子とつきあってたり、バスケ部のキャプテンとつきあったり、いろいろと。野球部はかなり筋トレをやる部活だったんですけど、当時は栄養面があまり意識されていなくて、筋トレをやればやるほど体が絞まって細くなってしまって、腹筋もバキバキで、今でいう細マッチョで、水泳の時間とかかなりキャーキャー言われてて、モテキでしたね。

棚橋選手は勉強もできますよね。

いやらしい話なんですけど、一番の成績で高校に入学して、部活をやっていたころは下がっていったんですけど、３年で部活を引退してからは、しっかり勉強して、結局その学校の受験生の中で一番いい大学に受かりました。一番で入学して、いったんは下がるけど、また一番で卒業するという、カッコいい感じですね。 ま、こんなことを言うから、男性ファンにうっとうしがられるんですけどねw。

部活を引退してからの、上手な受験勉強の取り組み方、秘訣を教えてください。

やっぱり切り替えですね。甲子園に行った事も無い公式戦で一勝の僕が、高３までプロ野球選手の夢を追い続け、ダメだと思った瞬間、プロ野球を扱うような新聞の記者になろうと思ったんです。それならマスコミに就職できるような大学の学部に入らないとってことで、すぐに受験勉強に切り替えました。秘訣と言えば、部活で鍛えた体力で、一日３、４時間の睡眠以外は、ずっと受験科目の勉強をしてました。あと、休み時間も席を立たないで勉強するって決めていて、隣の席のテニス部の女の子に、英単語の問題を出してもらったりして。

隣の席の女の子ってのが秘訣ですかね。

そうですね。そういうちょっとしたスパイスが大事なんですね。その子は推薦で大学が決まってたので、僕の受験勉強に協力して！ ってことで、コミュニケーションをとりつつ、自分も喜びつつ、頭に入りつつで、いい連鎖を生みながら、やってましたね。あとはやっぱり息抜きも大切なので、その息抜きが、僕にとってプロレスだったんです。録画を見たり、深夜放送を見たりとか、時々丸一日見てしまうことがあって、そういうときは、すぐに切り替えて、次の日からまたきっちり勉強してました。

プロレスラーでエースを目指す！

棚橋選手がプロレスラーを目指したキッカケは。

プロ野球選手の夢が破れて、新聞記者になろうと思って入った大学で、野球部に入るか、トライアスロンをやろうか迷っていたら、一番最初にプロレス同好会に誘われてしまって、僕もプロレスが好きだったので、同好会の会長さんに、「この同好会に入ったらプロレスラーになれるんですか？」って聞いたら、「なれるぞ！」って。結局、それまでなった人一人もいなくて、嘘だったんですけど、そこからプロレスにどっぷりのめり込んで、トレーニングをして最初の一年間で68キロだった体重が82キロになって、当時ジュニアヘビー級という階級があったので、もう少しがんばったらプロレスラーになれるんじゃないかと思って火がつきました。それがキッカケですね。

部活というと、”キツイ練習“ですが。

新日本プロレスの入団テストに合格すると寮に入るんですけど、練習がキツくて入団してもどんどん辞めていくんです。今もデビュー前の練習生がいるんですけど、彼らの練習を見ていると、見ている方が気分悪くなるくらいの練習量です。

プロレスラーの練習っていうと、伝説のように語られていますけど、具体的にはどんなキツイ練習があるんですか。

スクワットを1000回とかは慣れればできるんですけど、ジャンピングスクワットを１分間、腕立てを30秒を10セット繰り返すメニューはキツイですね。

この７号は、新学期の始まり、感謝の気持ちを伝えるということで、「ありがとうからはじめよう」というテーマなんですけど、棚橋選手にとって、なにかエピソードはありますか。

新日本プロレスの入団テストに合格すると、一通の書類が送られて来るんです。”練習中などにケガをしても、死亡しても責任は取れません”っていう内容で、入団するにはその書類にサインをする必要があるんです。親からしたら複雑だと思うんですけど、そういう状況でも父に、「一番になってこい！」って気持ちよく送り出してくれたことに感謝しています。でも、2009年にプロレス大賞でMVPをいただいて、実質、日本で一番のプロレスラーになったとき、うれしくてすぐに実家に電話して、「日本で一番になったよ！」って言ったら、「今仕事中だからまた後でな」って言われて、あれ？ 父親が一番になれって言ってたのにって、なんか温度差を感じましたねw。

部活や、プロレスを辞めたいと思った事はありますか。

野球部の時は、自分のエラーやプレーでチームの足を引っ張った時に思いましたね。でも自分が一番下手だったので、少しでもみんなより練習をして、自分が上手になればチームとしての力も上がっていくなって考えて踏みとどまりました。プロレスラーになってからも辞めたいというか、自分の考え方と合わないとかいろいろあったんですけど、周りのせいにするんではなくて、自分に実力が無いからダメなんだと思うようになってから、うまくいくようになりました。

部活のキツイ練習に、上手に向き合える方法はありますか。

ランニングとか息上げとかが、キツイ練習だと思うんですけど、そういう時は、本番の試合で自分が活躍しているイメージしながらやると、切り抜けられますね。

試合前とか試合中、緊張はしますか。

若手の頃は緊張しましたけど、今は新日本プロレスのエースなんで、余裕だぜ! って気持ちでやっています。

棚橋選手にとってターニングポイントをお願いします。

2009年1月4日、東京ドーム。チャンピオン・武藤敬司vsチャレンジャー・棚橋弘至の試合です。武藤敬司って言ったらプロレス界のビッグネームで、それまでにも新日本プロレスの選手が次々に挑戦して敗れてて、最後に棚橋しかいないっていう状況の中で勝てて、その年のMVPになったことですね。

棚橋選手の今後の目標は。

東京ドームを超満員にするとか、若い選手にとって夢のある業界にするとかもあるんですけど、一番は、プロレスを観ていて楽しい！ って思ってもらえる人を増やすことです。

最後に中高生にメッセージをお願いします。

改めまして、１００年に一人の逸材、棚橋弘至です。中高生のみなさん、今ガンバっている、部活、勉強、それは将来必ず役立ちますので、全力でガンバってください。応援しています！ 最後に、ヒーローインタビューをご覧のみなさん、「愛してまーす！！」

ありがとうございました。